夜になると、壁の向こうから「ザーッ」「ゴーッ」と水が流れる音がする。自分は水を使っていないのに、上階でトイレやお風呂を使うたびに聞こえてくる――。
マンションでは、他の住戸から出た排水が共用の排水管を流れるため、自室まで排水音が伝わることがあります。
ただし、眠れないほど響く、毎日のように繰り返す、以前より明らかに大きくなったという場合まで、「マンションだから仕方ない」と我慢する必要はありません。排水管やその周囲の状態を調べることで、改善につながる場合があります。
まずは、排水音がいつ・どこから・どの程度聞こえるのかを記録しておくと、管理会社へ相談するときに状況を具体的に伝えられます。
マンションの排水音がうるさいのはなぜ?
上階や他の住戸の排水が共用の排水管を流れる
マンションでは、トイレ・浴室・洗面・キッチンなどから出た排水が、建物を縦に通る排水立て管などへ流れ込みます。
そのため、自宅では水を使っていなくても、
- 上階でトイレを流したあとに「ザーッ」と聞こえる
- 入浴する時間帯になると水の流れる音が続く
- 壁の一部分から「ゴーッ」と低く響く
といったことがあります。
「ザーッ」「ゴーッ」という流水音ではなく、排水口や排水管から「ゴボゴボ」と空気を巻き込むような音がする場合は、原因が異なることがあります。
参考記事:排水管からゴボゴボ音がする原因とは?詰まり・通気不良・封水異常・逆流リスクと対策を詳しく解説
「自分は水を使っていないのに水の音がする」というだけなら、漏水とは限りません。 他の住戸から出た水が、自室付近を通る排水管を流れている可能性があります。
排水の音や振動が配管・建物を通じて伝わることがある
排水音は、水が流れている場所からそのまま聞こえてくるとは限りません。
排水管から発生した音が空気を通して伝わるほか、配管から床などへ振動が伝わり、別の場所で音として聞こえることもあります。そのため、実際に排水している場所とは離れた壁や天井付近から聞こえるように感じる場合があります。
集合住宅を模擬した三井住友建設の実験でも、排水方法や流量だけでなく、排水管・継手への被覆やPS(パイプスペース:給排水管などを通す空間)の界壁仕様によって、居室側で測定される排水騒音が変化することが確認されています。
排水管への被覆やPS界壁によって騒音がどう変わるかは、三井住友建設|排水管・継手やPS界壁による排水騒音の測定結果で確認できます。
つまり、同じように上階から水が流れていても、配管の位置や建物側の遮音条件などによって、室内での聞こえ方は変わります。
夜や早朝は排水音が気になりやすい
昼間はテレビや会話、屋外の交通音などがあるため、排水音が周囲の音に紛れていることがあります。
夜や早朝は周囲が静かになるため、昼間なら意識しなかった「ザーッ」「ゴーッ」という音が目立ちやすくなります。深夜でも他の住戸でトイレや入浴などがあれば、その排水は発生します。
そのため、
昼は気にならないのに、寝ようとすると壁から水の音が聞こえる
という場合、夜だけ排水設備に異常が起きているとは限りません。
一方、以前は気にならなかったのに最近になって明らかに大きくなった場合は、その変化も管理会社へ伝える材料になります。
低層階でも排水音が問題になることがある
住まいるダイヤルの相談統計でも、高層住宅の低層階では排水音に関する相談がみられます。
ただし、単純に「下の階ほど上階からの排水が集まるから、必ずうるさくなる」という話ではありません。排水管の長さや曲がり、配管の位置、建築・設備の仕様など、複数の条件が音の発生や伝わり方に関係します。
階数だけで原因を決めるのではなく、実際にいつ、どこで、どんな音が聞こえているかを確認することが大切です。
管理会社へ相談する前に排水音を記録する
排水音は、管理会社の担当者が確認に来たときに鳴るとは限りません。
「水の音がうるさい」だけでなく、いつ、どこで、どんな音が、どのくらい続くのかを残しておくと、発生条件を伝えやすくなります。

排水音が気になるときは、発生する時間・聞こえる場所・生活への影響を記録しておくと、管理会社へ状況を具体的に伝えられます。
発生日時・継続時間・頻度を残す
記録は、
- 23時前後にほぼ毎日聞こえる
- 朝6~7時ごろに多い
- 1回につき30秒程度
- 数分間続く
- 1日に何度も繰り返す
といった程度で構いません。
「最近になって大きくなった」「以前は聞こえなかった」という変化がある場合は、いつごろから変わったのかも残してください。
毎日ほぼ同じ時間帯に発生しているなら、他住戸で水を使う時間との関連を管理側が検討する材料にもなります。
聞こえる場所と音の特徴を記録する
「寝室の北側の壁」「浴室横の壁」「天井付近」のように、実際に聞こえる場所を記録します。
音も、
ザーッと水が流れる音
ゴーッと低く響く音
水が落ちるような音
など、聞こえたままの表現で構いません。
スマートフォンで録音できる程度なら、日時が分かる形で残しておくと、管理会社へ相談するときにも使えます。
ここで重要なのは、「原因がありそうな場所」ではなく「実際に聞こえた場所」を記録することです。壁から聞こえていても、その壁の中に音の発生源があるとは限りません。
睡眠など生活への影響も記録する
音の大きさを自分で数値化できなくても、
毎晩23時ごろ、寝室の壁からザーッという音が数分続き、目が覚めることがある
のように、発生状況と実際の生活への影響をセットで残せます。
「気になる」だけなのか、「眠れない・目が覚めるほどなのか」まで記録しておけば、管理会社にも生活上どの程度困っているのかが伝わりやすくなります。
マンションの排水音を軽減する方法
共用の排水管から伝わる音は、室内から原因そのものを直せないことがあります。
自分でできるのは、寝る位置を変えるなど音が気になりにくい環境をつくる応急的な対策が中心です。毎日のように繰り返す、睡眠に支障が出ているといった場合は、建物側に原因がないか確認してもらうことも検討します。
自分でできるのは生活上の応急対策が中心
寝室で排水音が気になる場合は、音が強く聞こえる壁からベッドを離したり、枕の位置を変えたりすると、聞こえ方が変わることがあります。
特に音が強く聞こえる壁の近くに枕元がある場合は、就寝時に音を意識しやすくなります。
ただし、家具やベッドの配置を変えても、排水音そのものが小さくなるわけではありません。
位置を変えても目が覚めるほどの音が続くなら、室内でできる対策だけで解決しようとせず、管理会社への相談を検討してください。
市販の防音材だけでは改善しないこともある
壁から音が聞こえると、防音シートや吸音材を貼りたくなるかもしれません。
しかし、音の伝わる経路によっては、聞こえる壁に防音材などを貼っただけでは十分な効果が出ないことがあります。
壁から聞こえているからといって、その壁自体が音の発生源とは限らないためです。
原因や伝わり方が分からないまま大掛かりな防音対策をするより、生活に支障がある場合は、先に管理側へ発生状況を伝えた方が原因の確認につながります。
建物側の原因は管理側による調査が必要
排水管の遮音状態や固定方法、配管が通るスペースなどは、居住者が室内から確認できる範囲ではありません。
特に共用排水管が関係している場合は、自分の住戸だけではなく、建物設備として確認する必要があります。
住まいるダイヤルには、新築マンションで上階の浴室や洗面から聞こえる排水音について、管理会社へ調査を依頼した相談事例があります。
この事例では、施工業者の調査で排水管そのものに異常は確認されませんでした。一方で、共用部分の排水管が原因と考えられる場合は管理組合に対応を求めることや、同じタイプの他住戸でも同様の排水騒音がないか確認する方法が示されています。
実際の相談内容と対応の考え方は、住まいるダイヤル|上階からの排水音を管理会社へ相談した事例で確認できます。
「排水管が壊れているか」だけでなく、なぜ室内まで強く音が伝わっているのかを確認してもらうことが大切です。

排水音がうるさいときは管理会社・管理組合へ相談する
毎日のように繰り返す、夜中に目が覚める、以前より明らかに音が大きくなった場合は、記録した発生状況を管理会社へ伝えます。
発生時間・場所・頻度・生活への影響を伝える
管理会社には、原因を推測して伝えるより、実際に確認できた状況を伝えます。
たとえば、
毎日23時前後になると、寝室の浴室側の壁から「ザーッ」という水の流れる音が聞こえます。1回2~3分ほどで、夜中に目が覚めることもあります。以前より音が大きくなったように感じます。
といった伝え方です。
録音している場合は、「音を録音したものもあります」と伝えておけば、必要に応じて確認してもらえます。
一方で、
上の部屋のお風呂がうるさい
と発生源まで決めつけるのは避けた方がいいでしょう。
排水音は、実際に音が発生している場所とは離れた壁や天井から聞こえることがあります。
「上階が原因だと思う」ではなく、自分が確認できた事実を伝える。 その方が、配管や建物側を含めて原因を調べてもらいやすくなります。
同じ排水管につながる住戸でも発生していないか確認してもらう
自室と同じ排水管につながる住戸や、同じ間取りの住戸でも似た音が聞こえているなら、原因を探る手掛かりになります。
管理会社や管理組合へ、
同じ排水管につながる住戸や、同じ間取りの住戸でも、同じような排水音が出ていないか確認できますか。
と相談してみる方法があります。
これは、自分で他の住戸を訪ねて確認するという意味ではありません。
複数の住戸で似た音が確認されれば、特定の住戸から聞こえる生活音だけではなく、共用排水管や建物側の音の伝わり方を調べる材料になります。
共用排水管などが原因なら改善につながる場合がある
管理会社への相談は、上階の住人へ注意してもらうことだけが目的ではありません。
共用排水管やその周囲が関係していると考えられる場合は、
- 音がどの付近で発生しているのか
- どの経路で室内へ伝わっているのか
- 建物側に改善できる部分がないか
といった点を確認してもらえる可能性があります。
住まいるダイヤルには、マンション1階で給排水設備の騒音に悩み、販売業者へ申し出た結果、複数回の防音工事が行われた相談事例もあります。
この事例では、工事後も騒音が残っており、対策すれば必ず解消することを示す事例ではありません。
それでも、給排水設備からの騒音について、単なる生活音として処理されるだけではなく、建物側の調査や工事が実際に検討される場合があることは分かります。
調査後に行われることがある排水音対策
建物側に原因があると考えられる場合は、音がどこで発生し、どの経路で室内へ伝わっているかを確認したうえで対策が検討されます。
排水管から出る音を抑える
排水管そのものから伝わる音に対しては、配管を遮音材などで覆う方法があります。
三井住友建設の実験では、排水立て管や継手への被覆処置によって、居室側で測定される排水騒音に違いが確認されています。
ただし、配管を覆えば必ず静かになるわけではありません。排水管から直接伝わる音だけでなく、建物側へ伝わる振動が関係している場合もあるため、原因に応じた対策が必要です。
配管から建物へ伝わる振動を抑える
排水による振動が配管の支持部分などを介して建物へ伝わっている場合は、配管の支持方法や防振状態などが確認されます。
排水立て管の下部にある継手や横方向の配管も騒音源になることがあり、配管への被覆によって騒音を低減できる場合があることが実験で確認されています。
こうした部分は壁や床の内側にあることが多く、居住者が室内から状態を判断するのは困難です。
配管が通るスペース周辺の遮音状態を確認する
排水管が通るPS(パイプスペース)と居室との間で、どの程度音を遮れているかも聞こえ方に関係します。
調査では排水管だけでなく、配管を囲む部分や居室との境界などが確認されることもあります。
排水管の被覆、防振、配管周辺の遮音対策は、居住者が自分で共用配管を加工して行うものではありません。共用部分が関係する場合は、管理会社や管理組合を通じて対応を検討します。
「異常なし」と言われても排水音がうるさい場合は?
設備として異常がないことと、室内で排水音に困っていないことは別です。
住まいるダイヤルには、上階の浴室や洗面からの排水音について施工業者が調査したものの、排水管そのものには異常が確認されなかった相談事例があります。
設備に異常がなくても騒音問題は残ることがある
「配管に破損や詰まりなどの異常はない」という調査結果でも、夜間の排水音で眠れないのであれば、生活上の問題は残っています。
その場合は、
- 同じ排水管につながる住戸や同タイプの住戸でも音が聞こえているか
- 音がどの経路から室内へ伝わっているか
- 建物側に改善できる部分がないか
といった点を、管理会社や管理組合へ確認する方法があります。
「設備に異常なし」という回答だけで、排水音に改善の余地がないとは判断できません。
改善しない場合は住宅相談窓口への相談も検討する
管理会社や管理組合へ相談しても対応が進まない、施工や建物設備に問題があるのか自分では判断できない場合は、第三者の住宅相談窓口へ相談する方法があります。
住まいるダイヤルは、国土交通大臣から指定を受けた住宅専門の相談窓口です。住宅の不具合や事業者とのトラブルなどについて相談できます。
相談できる内容や利用方法は、住まいるダイヤル|住宅について専門家へ電話相談する方法で確認できます。
排水音ではなく漏水を疑った方がいいケース
水の音が長時間途切れない、壁や天井に新しいシミ・湿り・水滴がある場合は、通常の排水音ではなく漏水も疑います。
自室の給水管からの漏水が疑われる場合は、すべての蛇口を閉め、水を使っていない状態で水道メーターが動いているかも判断材料になります。
一方、マンションでは共用部分や他住戸からの漏水も考えられます。壁や天井に湿りや水滴などを確認した場合は、騒音対策よりも漏水の確認を優先し、管理会社や管理者へ連絡してください。
まとめ|うるさい排水音は記録して管理会社へ相談する
マンションでは、他の住戸から出た排水の音が自室まで伝わることがあります。
ただし、毎晩眠れないほど響く、頻繁に繰り返す、以前より明らかに大きくなった場合まで我慢する必要はありません。
発生時間・聞こえる場所・音の特徴・生活への影響を記録し、管理会社や管理組合へ相談してください。 建物側に原因があれば、調査や対策につながる場合があります。


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